The first 200 lines.
ダンテは1265年 フィレンツェに生まれ
1321年に死亡
彼の代表作「神曲」では
地獄 煉獄 (れんごく)天国を 巡る旅が描かれる
イタリア語を 洗練させただけでなく
人間の想像力の限界を 拡張した
アメリカ人作家 ニック・トーシュは
1949年生まれ 2019年逝去
彼は文学界の因習を打破し
現代の暗い詩情を掬(すく)い取った
俺が心から書いたものは
俺が心から書いたものは
ニューアーク 1998年
ニューアーク 1998年
ニューアーク 1998年
1ミリも変えちゃいけない
1ミリも変えちゃいけない
他人の心は入り込ませない
偽物の人工的な心なら なおさら許せない
市場などクソくらえ
俺の本を修正するのは 豹(ひょう)にネイルするのと同じ
フォークナーは言った
“編集されるくらいなら 落馬したほうがマシ”
“妻が馬の世話係に ファックされるほうがマシ”
一流編集者は手を加えない
芸術家と共謀し 自由と利益を与える
“フォークナーさん 何を考えて書きましたか?”
“カネ”
最高だろ? “カネ”と答えた
ああ カネだ
そうだ
そうだよ
芸術家が働くのは 愛する者のため
そして子孫のためだ
報酬をもらうのは そいつらだから
週給でも月給でも 年俸でもない
死ねば ようやくカネがもらえる
それで これは何なんだ?
それか?
なかなか やれてないが
これこそ やりたいことだ
「神曲」の翻訳だよ
親しみすぎて 自分の作品のようだ
10年かけて訳した
裏地を替えた?
何歳になってもクールだ
それはどうも
心配ない
困った時には必ず援助するさ
ダンテって誰?
誰かって?
作家だよ 古い時代のな
代表作は 当初は「喜劇」 後に「神曲」と呼ばれた
へえ
そうだ
だがダンテは行き詰まった
韻律というものに囚(とら)われた
希望ってものがない
彼には何か欠けていた
だから作品も何か欠けてる
分かるよ
ダンテの遺稿
ニューアーク 1969年
若造よ
おじさん
幽霊でも見たような顔だな
子供を殺した
いつ?
さっき
どこで?
ガラス工場の近く
方法は?
喉を切った
近所の子か?
初めて会った
凶器はどこだ?
使ったナイフはどこへ?
下水に捨てた
なぜ殺した?
“死にたいか?”と聞かれた
相手から吹っかけてきたのか
今の気分は?
ほら 座れ
そういう仕事に就くつもりか
タフガイとして生きるか?
ううん
そうだ それがいい
いつもの言葉を忘れるな
鉄則だ
汝(なんじ)の隣人を愛せよ
うん
その少年みたいになるなよ
うん
誰のことも傷つけるな
さあ
続きは何だ? 言ってみろ
誰も傷つけるな 誰にも傷つけられるな
だから お前は傷ついてない
うん
本当に 近所の子じゃないんだな?
初めて見た子だ
おいで
おじさん
何だ?
今の話を 告解の時にするべき?
告解? 何の話だ
初聖体の時だよ
ああ それか
神はどこにでもいる
うん
ああ
神は全てを聞いてる
うん 全てを見て 聞いてる
神と司祭 どっちが大事だ?
神だよ
神は今の告解を聞いたよ 声に出したんだから
俺が聞いた 神も聞いた
おじさんは そうする?
ああ そうしてるさ
これで罪は消えた?
罪? 罪なんか犯してない
お前に刃物を向けたバカが 罪を犯したんだ
神が彼を罰した
お前を使って
ありがとう
俺らは相棒だ
うん 相棒だ
忘れるな
神と俺らの間で起きたことは 特別なんだ
誰にも話しちゃいけない
話すことこそが罪なんだ
いいな?
よし
外に流しがある
手を洗ってこい
分かったんだ
俺は確かに赦(ゆる)された
誰にも話さなかった
今 話しちゃったけど
ボラボラ島 2001年
クリーム色のクチナシの花
紫の花 赤の花 ピンクの花 黄の花
数えきれぬほどの花
数えきれぬ香りが漂う
太陽の光と 深く茂った緑の中で
太陽の闇魔術を 称(たた)える記念碑が立つ
薄れた岩石線画
すり減ったサンゴの供物台
19世紀後半まで 生贄(いけにえ)が捧げられたマラエ
血の捧げ物と人肉食の香り
花の香りと混じり合う
白の花 紫の花 赤の花 ピンクの花 黄の花
9つの空があった
天じゃない ただの空だ
ダンテの知る真実は この発見から始まった
彼が最初に知った空は
長い時を経て 最も珍しい空になった
無限性を備えた偉大な空
根源 存在 年月 そして夜を内包している
ダンテは魔法の丘で育った
俺も同じだ
9の空のうち1つは 人生で一度だけ見る
〝閉店〞 死ぬ日の空だ
〝閉店〞
NYは 8月の最も暑い時期
NYは 8月の最も暑い時期 NY (ニューヨーク)2001年
NY (ニューヨーク)2001年
NY (ニューヨーク)2001年 昼の空は重くよどみ 白い光が低く差し込んで
昼の空は重くよどみ 白い光が低く差し込んで
夜空は灰と蒼白(そうはく)の もやに覆われている
ルーイは なじんでた
彼はタバコの煙を吸い込む
彼にとっては深夜ではない
巡回か? 友よ
友と呼ぶな
酒と灰皿をくれ
グラッパを仕入れたんだ
そんなものはバカに出せ
デュワーズの水割りをよこせ
灰皿はいい 床に捨てる
調子はどう?
ああ そうだな…
俺が子供だった頃は
口ひげが立派なほど 立派な男だと言われた
でも今では口ひげを見ると
警官かゲイだと思うね
両方かもな
剃ったほうがいいかな
いいよ 父親は警官だろ?
ゲイっぽさも父親譲りだな
似合うよ
その口ひげが
なあ
お前のおじはカスだ
お前もカスだが小物だからな
お前のおじは本物のカスだ
しばらくは ここを順調に経営してた
ギャンブルで 全部 ドブに捨てた
俺の友人が助けたのに またやらかした
電気やガスが 止められるたびに
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