The first 200 lines.
(秒針が時を刻む音)
(高倉宗一郎(たかくらそういちろう)の声)僕は 大切な人をなくす運命にあるらしい
事の始まりは1968年
3億円事件の犯人が捕まったあの年
僕の母は 僕を産んで まもなく他界し
その17年後
今度は父が 母の元へ旅立った
そんなことは 世間から見れば ほんのささいな出来事で
誰しもが 未来に思いを はせていた
(テレビ音声) 帝都大学研究科
遠井(とおい)研究室では
世界で初めて 瞬間移動の実証に 成功しました
今回行った実証実験では 従来に比べ⸺
転送効率を100倍以上とし
実用に向け 大きく前進しました
(宗一郎の声)時間はまるで
僕一人を残して 過ぎているようだった
それでも 寂しいと思うことは 一度もなかった
父と入れ替わるように
ピートに出逢ったからだ
程なくして 僕とピートに 新しい家族ができた
父と同じ大学の教授で 親友でもあった功一(こういち)さんが
僕らを引き取ってくれたのだ
娘の璃子(りこ)も ピートを弟のように 可愛がってくれた
それからの数年間
僕は大学で電子工学を
自宅の研究室では 功一さんから機械工学を学んだ
幸せな日々は いとも簡単に 運命なんて忘れさせてくれた
(テレビ音声)速報です
本日未明に大西洋沖で墜落した World Airline社…
(宗一郎の声) しかし 運命のほうは
僕を忘れなかったらしい
中学生になった璃子は
叔父の和人(かずと)さんの元で 暮らすことになった
そして今 1995年
再びピートと2人暮らしになって
もう3年が経とうとしている
(テレビ音声) クレデウス生命なら
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幸せな未来をお約束
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(司会)こんにちは
さあ 3月1日水曜日 始まりました「HAPPY DAY」…
それでは今月も 頑張っていきましょう
最初のコーナーに参ります
“日本のトップランナー”です
今日はどこに 行っているんでしょうか
呼んでみましょう
藍(あい)ちゃーん
(リポーター) はーい 日本のトップランナー
今日はフューチャー・ワークス・ エンタープライズ
通称FWE社にお邪魔しています
こちら どんな会社か ご存じですか?
今 大注目なこちら
家庭用ロボット“A-1(ワン)”を 開発している会社なんです
この“A-1” 何がすごいのかと言うと
汎(はん)用人工知能を搭載し 人間のように常に学習 進化し続け
あらゆる指令に 対応できるそうなんです
開発者はこの方 高倉宗一郎さん
この高倉さんですが 現在27歳 大学卒業後 FWE社に入社…
(電話の着信音)
(高倉宗一郎)はい
(松下(まつした)和人)もしもし 宗一郎?
和人さん 何ですかあの写真…
(和人)おお 見てたか 珍しいな
いや 正確には 俺が見てたというよりは…
ともかく 俺の写真なんて 必要ないでしょう
(和人)あるある ほらほらほら
(コメンテーター) ほーんとかっこいいわ~
私 好みのタイプかも
顔の話してんですか? 遠藤(えんどう)さん
(アシスタント) お顔も素敵ですけれども⸺
やっぱり じっくり10年間⸺
1つのものに向き合って 作り上げるという姿勢に…
(和人)なっ いい宣伝になっただろ
ああ そうだ
総務のほうから今度
ライズ電子と交わす 製造委託契約書について…
(気象予報士)ただいま お昼12時を回ったところですが
雪雲は依然として 関東平野上空に停滞しており
なおも降りやむ気配はありません
それでは各地の天気を 見ていきましょう
東京都 北の風…
(和人)ああ あったあった
念のために お前にも 見てもらおうかなと思って
(和人)でさ 例の譲渡契約書… (宗一郎)おい ピート
すみません 和人さん 後で折り返します
(和人)おい
(宗一郎の声) ピートは僕と出逢ってから
極めて単純明快な哲学を 編み出していた
住居と食と天気の世話は僕任せ
それ以外の一切は自分持ち
その中でも天気は 特に僕の責任だった
窓越しに冷たくて白い 不愉快極まる代物を見つけると
家中にあるドアを
全て開けて見せろと まとわりついてくる
ピートは少なくとも どれか1つが
夏に通じているという 固い信念を持っていたのだ
(松下璃子)うわっ 何?
おお 璃子
ごめんね 外はまだ冬なんだ
(宗一郎の声)ピートは どんなに これを繰り返そうと
決して“夏への扉”を 諦めようとはしなかった
(A-1の作動音)
(時計の時報)
(宗一郎)ああ…
ん…
またこの歌?
飽きないね
いい曲でしょ 大好きなの
こんなん読んで楽しいの?
楽しいよ そもそもこれ 宗ちゃんの本じゃん
女子高生が読むもんじゃないだろ
だから面白いの
あと1週間じゃ終わんないな
また夏休みに来ればいいよ
宗ちゃんは寂しくないの?
ん…
和人さんが選んだ学校だから きっといい所だと思うよ
これ 新しいロボット?
いや これは個人的に 進めてるやつ
(璃子)“プラズマ蓄電池”って お父さんの…
やっと 実現の目途(めど)が立ったんだ
もし実用化できたら
あらゆる機械が 充電を必要としなくなって
エネルギー革命が起こる
今進めてるロボット開発も 飛躍的に進歩させることができる
功一さんの夢見てた ロボットが人に寄り添う未来も
そう遠くないかもしれない
どうした?
ううん
よし 今晩は宗ちゃんの リクエストに応えよう
何食べたい?
じゃあ ハンバーグ レンコン入ってるやつ
え… またそれ?
(インターホンの音)
いいよ あたし出る
はーい
(宗一郎)璃子
お客さん 誰?
(白石(しらいし) 鈴(りん))私
白石さん
確認してもらいたい書類が いくつかあったんだけど
なかなか会社に来ないから
社長から電話あったでしょ?
(ピートのうなり声)
おい ピート
怖がらせちゃったかな
(宗一郎)ああ すいません
そういう時は“ありがと”でしょ? 恋人には
ねえ 璃子ちゃん?
どうなんですかね…
それと寒いから お鍋一緒にどうかなと思って
あ… 夕食は今 璃子が…
あたし やっぱり引っ越しの 準備あるから帰るね
璃子?
ああ 手伝います
いいの どこに何があるか すぐにわかるし
ああ 自分がいなくなっても 困んないようにって 璃子が
次の学校は寮生活だもんね
よっぽど頼ってたんだ
下手な家事するくらいなら 開発しろと…
おかげでA-1ができました
璃子ちゃんを 不安にさせないため?
え?
自分が一人になっても 心配かけないようにって
私の告白 オーケーしてくれたの?
そんな 俺は…
じゃあ 私のことが好き?
もちろんです
璃子ちゃんよりも?
なんで璃子と…
ハァ…
やっぱどうかしてる
(宗一郎)え?
会社の株 私に譲渡するなんて
ああ
それは和人さんと相談して 決めたことですから
社長のほぼ独断でしょ?
宗一郎さんは 本当にいいと思ってるの?
一介の経理秘書が 急に取締役って…
正直 驚きましたけど…
白石さんの働きぶりは みんな認めてますから
でも私は 株なんてどうだっていいの
あなたが仕事に集中できるなら 何でもいい
なのに…
年がいもなく 璃子ちゃんに 嫉妬なんかして
(ノックの音)
(松下和人)どうぞ
あっ ごめんなさい
(和人)ああ いやいや 終わったところだから
座って
(宗一郎)和人さん 体調 大丈夫ですか?
これさえ欠かさなきゃ 絶好調だよ
糖尿病なんて なるもんじゃないね
そっちはどう?
A-1の改良プログラムを 組み終えたので
2号機に向けての方針を 今 機械工と相談しています
ああそうか 次も期待してるよ
急ぎの打ち合わせって何ですか?
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